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東京地方裁判所 平成12年(ワ)1287号 判決

原告 A

右訴訟代理人弁護士 井上義男

對崎俊一

被告 東京海上火災保険株式会社

右代表者代表取締役 丸茂晴男

右訴訟代理人弁護士 木村龍次

右訴訟復代理人弁護士 金城未来彦

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金一八六三万四〇〇〇円及びこれに対する平成一二年二月二日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告が、自動車事故によって終身労務に服せない程の著しい障害が残った旨主張して、保険会社である被告に対し、自動車総合保険契約に基づき、所定の後遺障害保険金及び医療保険金、並びにこれらに対する本訴状送達の日の翌日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求めた事案である。

一  争いのない事実等(証拠の記載がない項目は、当事者間に争いがない事実である。)

1  原告は、平成九年七月一日、被告との間で、保険期間を右同日午後四時から一年間、被保険自動車を自家用小型乗用車(車名BMW、登録番号千葉七七て二〇八七)と定めて、自家用自動車総合保険契約を締結した。

2  右保険契約においては、

(一) 自損事故につき、原告が被保険自動車の運行に起因する事故によって身体に傷害を被り、その直接の結果として、神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないとの後遺障害を生じたときは、後遺障害保険金として一一一〇万円を支払い、かつ右傷害治療についての医療保険金として、入院治療は一日につき六〇〇〇円、通院治療は一日につき四〇〇〇円を支払うものと定められ、

(二) 搭乗者傷害につき、原告が被保険自動車の運行に起因する事故によって身体に傷害を被り、その直接の結果として、事故の発生の日から一八〇日以内に前同様の後遺障害を生じたときは、後遺障害保険金として七八〇万円を支払い、かつ右傷害治療についての医療保険金として、入院治療は一日につき一万五〇〇〇円、通院治療は事故後一八〇日までの通院につき一日一万円を支払うものと定められている。

3  原告は、平成一〇年六月二八日午前一時五五分ころ、被保険自動車を運転中、東京都江東区大島九丁目四番先の船堀橋において、単独の衝突事故を起こした(以下「本件事故」という。)。

4  原告は、本件事故により、頭部を強打して、外傷性クモ膜下出血及び脳挫傷の傷害を被り、平成一〇年六月二八日から同年七月二三日まで東京都立墨東病院で入院治療を受け(入院日数二六日)、同月二七日から平成一一年六月二三日まで右病院及び千葉県循環器病センターで通院治療を受け(通院日数一二日、ただし、平成一〇年一二月二日までの通院日数は八日)、平成一一年六月二三日症状固定した。

(甲三ないし六)

5  原告は、被告から、本件事故による保険金として九四万円の支払いを受けた。

二  本件の争点

本件の争点は、原告の後遺障害の程度、酒酔い運転の事実の有無である。

1  原告の主張

原告は、本件事故により、記銘力及び見当識の障害、集中力及び計算力の低下、左右失認の後遺障害が残ったところ、これは、前記保険契約に定める「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができない」との要件に該当する。

したがって、原告は、本件の保険契約に基づき、自損事故条項による後遺障害保険金として一一一〇万円、医療保険金として、入院治療分につき一五万六〇〇〇円(二六日×六〇〇〇円)、通院治療分につき四万八〇〇〇円(一二日×四〇〇〇円)、搭乗者傷害条項による後遺障害保険金として七八〇万円、医療保険金として、入院治療分につき三九万円(二六日×一万五〇〇〇円)、通院治療分につき八万円(八日×一万円)、合計一九五七万四〇〇〇円から前記既払額九四万円を控除した一八六三万四〇〇〇円の保険金の支払請求権を有する。

2  被告の主張

(一) 原告の後遺障害の程度は、後遺障害別等級表九級に規定する「服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」に該当するに過ぎない。

(二) 本件の保険契約においては、免責事由として、原告が酒に酔って若しくは麻薬、大麻、阿片、覚醒剤、シンナー等の影響により、正常な運転ができない恐れがある状態で被保険自動車を運転している場合を規定している。本件事故は、原告が酒に酔って正常な運転のできない状態で起こされたものであるから、右免責事由に該当し、被告に保険金の支払義務はない。

第三争点に対する判断

証拠(乙一)によれば、自家用自動車総合保険普通保険約款では、自損事故条項の第三条一項二号に、被保険者が、酒に酔って正常な運転ができない恐れがある状態で、被保険自動車を運転した場合に、その本人について生じた傷害については保険金を支払わない旨定めており、搭乗者傷害条項の第三条一項二号も同旨の規定を置いていることが認められる。したがって、本件においても、原告が酒に酔って正常な運転ができない恐れがある状態で、被保険自動車を運転して本件事故を起こしたものであれば、右免責事由に該当し、被告に本件保険金の支払義務はないことになる。

そこで、証拠(乙三、五)によれば、原告が本件事故直後に入院治療を受けた都立墨東病院の診療録や看護記録に、入院時の所見として、推定アルコール濃度三〇〇mg/デシリットル、泥酔状態、アルコール臭あり、顔面赤いなどと記載されているほか、原告の母が答えたアンケートには、原告の飲酒癖として一日一合と記載されていること、右のアルコール濃度三〇〇mg/デシリットル(三・〇mg/デシリットル)は、第三度酩酊又は麻酔期という酩酊状態を示す数値であること、以上の事実を認めることができる。右認定に鑑みれば、診療録等には、アルコール濃度について右のように推定した根拠が明らかでなく、血中アルコール濃度測定も行われた形跡がないが、医師や看護婦が職業的な知識経験に基づいてなした所見と認められるし、ことに強いアルコール臭などは容易に感知できるものであるから、他に何ら疑わしい点が伺えない以上、右の診療録等の記載は十分信用に値するものというべきである。そして、これによれば、原告は、麻酔期に匹敵する酩酊状態で車を運転していたものであるから、正しく正常な運転ができない恐れがある状態で車を運転して本件事故を起こしたというべきであり、右免責事由により、被告に本件保険金の支払いを求めることはできない。

よって、原告の本件請求は理由がないから、主文のとおり判決する。

(裁判官 内藤正之)

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